相続人間で不公平感が生じる典型例は、介護に貢献した相続人と、過去に高額な贈与を受けた相続人の存在です。寄与分・特別受益はこれを調整する制度です。
1. 寄与分とは(民法904条の2)
被相続人の財産維持・増加に特別な貢献をした相続人の取り分を増やす制度。認められる類型:
- 家事従事型(家業を無償で手伝った)
- 金銭出資型(医療費・事業資金を負担)
- 療養看護型(長期介護を無償で実施)
- 扶養型(生活費を継続的に負担)
2. 特別受益とは(民法903条)
相続人が生前に受けた特別な贈与を相続財産に持戻して計算する制度。対象例:
- 結婚資金・新築祝い
- 大学院・留学費用(通常の教育費を超える)
- 事業承継のための資産移転
- 生命保険金(特別受益とされる場合あり、判例による)
3. 計算例:特別受益の持戻し
遺産6,000万円、相続人が子A・B、子Aが生前に2,000万円贈与を受けていた場合:
- みなし相続財産:6,000 + 2,000 = 8,000万円
- 各人の相続分:8,000万円 × 1/2 = 4,000万円
- 子Aの取得分:4,000 − 2,000(特別受益)= 2,000万円
- 子Bの取得分:4,000万円
4. 特別寄与料(民法1050条)
2019年新設。相続人以外の親族(息子の妻など)が無償で介護等した場合、相続人に対して金銭請求できる制度。請求期限は知った時から6ヶ月。
5. 実務上の注意
- 寄与分・特別受益の主張は遺産分割協議や調停で行う
- 客観的な証拠(領収書・介護記録・銀行記録)が重要
- 2023年4月から、相続開始後10年経過すると主張不可(民法904条の3)
よくある質問
介護したら自動的に寄与分がもらえますか?
いいえ。「特別な」貢献が必要で、扶養義務の範囲を超える長期・無償の貢献が要件です。相続人全員の合意か家裁の認定が必要。
生前贈与は何年前まで持戻しされますか?
従来は無期限でしたが、2019年改正で遺留分算定では10年以内に限定(民法1044条)。ただし遺産分割上の持戻しは別ルール。
生命保険金は特別受益になりますか?
原則として特別受益にあたらない(判例)ですが、保険金額が相続財産に比して著しく高額な場合は例外的に対象となる場合あり(最判平16.10.29)。
⚖️ 免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。個別事案は弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご相談ください。